若林 満 写真展 「Dérive (漂流)」
2026/10/3~2026/12/3まで、ライカギャラリー京都にて開催

© Mitsuru Wakabayashi

River in Kyoto

本展のタイトル「Dérive(デリヴ)」は、フランス語で「漂流」を意味します。1950年代、シチュアシオニスト・インターナショナルの活動のなかで展開されたこの概念は、都市を目的地へ向かうだけの場所ではなく、歩くことを通してその環境や感覚を体験する実践として考えられました。

若林が「Dérive」という言葉に出会ったのは、自身がすでに長く続けてきた撮影のあり方を振り返るなかでのことでした。なぜその場所で足を止めたのか、そのときには自分でもわからない。けれども行く先を定めずに街を歩き、目の前に現れるものを受け入れていく感覚は、まさに「Dérive」という言葉によって捉え直すことができるものでした。

それは、新しい考え方を身につけたというよりも、これまで自分のなかにあった感覚にひとつの名前が与えられたということなのかもしれません。

若林の写真に写るのは、誰かによって特別な意味を与えられた風景ではありません。光や空気、人の気配、その土地に漂う時間。歩くことで偶然出会ったものに目を向け、そのまま受け止めることで、見慣れた世界のなかにある別の表情が浮かび上がります。

 

私はいつも、目的地を決めずに街を歩く。

光の向きや人の気配に導かれるように足を進め、

その途中で出会った風景を写真に残してきた。

なぜその場所で足を止めたのか、そのときは自分でもわからない。

後になって、フランスの思想家ギー・ドゥボールが提唱した
「Dérive(漂流)」という概念を知った。

行く先を定めず、身を委ねて街を歩くと、見過ごしていた風景の意味が
立ち上がってくる。

すべての風景が等価になり、世界がそのまま開かれるというもの。

それは私に新しい考え方を与えたのではなく、
ずっと続けてきた感覚に名前を与えてくれた。

世界は、いつも私たちに開かれている。

その風景は、誰かに価値を与えられることで存在しているのではない。

そこに、静かに身を委ねられる自分でありたい。

若林 満

写真展概要

若林 満/Mitsuru Wakabayashi