THE I.C.E

ビラル・ザガウイ ― 「ライカQ3」と「ライカQ3 43」
2026/03/12
racing car in the snow

THE I.C.E – St. Moritz

THE I.C.E St. Moritzは、単なるイベントではありません。それは“冬の巡礼”ともいえる特別な時間です。凍りついた湖は舞台へと姿を変え、雄大な山々が背景を成し、世界屈指の名車たちが氷上を駆け抜けます。

写真家にとって、この週末は一年のハイライトのひとつです。華やかな名車はもちろん、そこへ向かう旅路、集う人々、そしてサン・モリッツならではの特別な空気感。そのすべてが、かけがえのない魅力を生み出しています。

「THE I.C.Eは、毎年必ずカレンダーに書き込んでいる大切なイベントです。なかでも、あの言葉では表せないほどの特別な空気感こそが、何度も足を運ぶ理由のひとつです。スイスアルプスの高地、凍りついた湖の上を、世界有数の伝説的な車が走る。その光景は、まさに忘れがたい写真を生み出す完璧な舞台です。しかし、魅力は車だけではありません。サン・モリッツまでの道のり、途中で出会う人々、滞在のひととき、食事、そしてそれらを取り巻くすべて──その体験全体が、この上なく特別なのです。「まさに魔法のような時間です」

ビラル・ザガウイ

Red sports car in a snowy landscape with many men taking pictures of the car

THE I.C.Eの会場に到着したら、まず何に目を向けますか?

まず視線を向けるのは、人々です。装いのセンスや連れている犬たち、そして隠しきれない高揚感。そこに漂う空気を感じ取ります。ドライバーと来場者が交わすやりとり、ふとした仕草や表情、情熱を分かち合う瞬間──そうした真実味のあるシーンを探しています。そして、細部へと目を移します。ホイールやスキーキャリア、ガルウィングドアなど、各車を唯一無二の存在にしているディテールの数々に惹かれるのです。

sports car in a snowy landscape

凍った湖の上での撮影は、視点や構図にどのような影響を与えますか?

何よりもまず、寒さが大きな課題となります。素手でいられる時間は限られているため、効率よく、瞬時に判断しなければなりません。同時に、機材との向き合い方もより意識的になりました。イベントは2日間にわたるため、装備は本当に必要なものだけに絞っています。

反射は常につきまとう問題であり、特に晴天のサン・モリッツでは顕著です。そのため、「ライカQ3」には偏光フィルターを、「ライカQ3 43」にはUVフィルターを使用しています。スピード感を伝える動きのブレも魅力的ですが、この手法はこれまですでに広く用いられてきました。そこで今年は、よりクリアでシャープな、そして時代を超越した印象を与える描写にフォーカスしました。また、晴天下では光が非常に硬くなることがあるため、フラッシュを使用する場面も多くありました。

イベントでは「ライカQ3」と「ライカQ3 43」を使用されましたが、実際に使ってみて、この2つのカメラにはどのような違いがありますか?

28mmはエネルギッシュで、見る者を引き込む力があります。被写体との距離が自然と近づき、ポートレートにも親密なニュアンスが宿ります。一方、43mmはより余裕のある視点をもたらします。一歩引いた位置から、気づかれることなく瞬間を捉える感覚です。それでいて、自然で美しい遠近感があり、ポートレートにも非常に適しています。

私自身は、まず28mmから始めることをおすすめします。この焦点距離は、自ら動き、立ち位置を定め、本当に撮りたい一枚に向き合う力を養ってくれます。

 

「これは理想的なセットアップです。バッグの持ち運びやレンズ交換も必要なく、シーンからシーンへと自由に移動できます。このシンプルさがワークフローを加速させ、撮影そのものをより快適なものにしてくれます」

ビラル・ザガウイ

ビラルの使用機材

Bilal Zagaoui with a Leica Q

ビラル・ザガウイ

ビラル・ザガウイは、シネマティックなビジュアルストーリーテリングを軸に活動する国際的フォトグラファー兼クリエイティブコンサルタント。自動車、レッドカーペット、セレブリティポートレート、さらには多彩なスポーツイベントまで幅広い分野を手がけ、決定的かつ心を動かす瞬間を、明確で洗練されたスタイルで捉えている。ビラルはフランス・ミュルーズで育ち、これまで南アフリカ、スペイン、中東でのプロジェクトを経験。現在はドイツを拠点に活動している。写真家としてのキャリアは4年前、オフィスワークと並行してスタート。国際的な著名イベントへのアクセスを可能にするパートナーネットワークを築き上げながら着実に活動の幅を広げる。コンパクトな機材構成を好むザガウイは「ライカQ3」と「ライカQ3 43」に小型フラッシュを組み合わせ、自然でありのままのイメージを追求している