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2023年度ライカ・オスカー・バルナックアワードの受賞者が決定

今年度で43回目の開催を迎えた国際写真コンテスト「ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)」の受賞者2名がこのたび決定しました。5名の審査員による最終審査の結果、一般部門である「ライカ・オスカー・バルナックアワード」の受賞者は、アメリカに活動拠点を置くバングラデシュの写真家イスマイル・フェルドウス。受賞作は「Sea Beach」です。今年度の一般部門では、世界30カ国以上の60名のエキスパートによる推薦という形式で候補者が選出されましたが、「Sea Beach」はディミトリ・ベックとジェームズ・ウェルフォードから推薦されました。また、30歳未満の若手写真家を対象とする新人部門「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」の受賞者は、中国の写真家である樂子毅。受賞作は「New Comer」で、上海にある復旦大学新聞学院から推薦されました。

2023年度ライカ・オスカー・バルナックアワード受賞 | イスマイル・フェルドウス 「Sea Beach」

バングラデシュの最南端に位置するコックスバザールはベンガル湾に臨む都市。職業や地位を問わずさまざまな人がつかの間の癒しと気晴らしを求めて訪れる国内屈指のリゾート地です。現在はニューヨークを拠点に活動するバングラデシュ出身のフェルドウスは、特別な場所であるコックスバザールに戻り、ビーチで過ごす人びととその独特の雰囲気を色彩豊かに捉えました。

イスマイル・フェルドウスのコメント:
「人口過多の国土に暮らすバングラデシュ人にとって、コックスバザールのビーチは自然の中で非日常が体験できる人気のリゾート。社会的な地位を問わず、誰もが気軽に訪れて休暇を楽しめるスポットです。忙しさとは無縁の場所であり、穏やかに流れる時間から「悩みやストレスは全部忘れてビーチでのんびり過ごそう」と誘われているかのような気がしてきます。LOBA受賞の報せは私の日常にこの上ない喜びをもたらしてくれたばかりか、今年を素晴らしい年にしてくれました。揺るぎない信念と尽きることのない情熱を持って日々の創作活動に取り組んでいますが、その甲斐あって今回受賞という最高の結果につながりました」

イスマイル・フェルドウスは1989年バングラデシュ生まれの写真家。現在はニューヨーク市とバングラデシュで暮らしながらパリの写真エージェンシーAgence VU’のメンバーとして社会や文化や人道をテーマに創作活動を続けています。写真の道を志したのは、バングラデシュの首都ダッカにあるビジネススクールに在籍していた時のことでした。2013年、縫製工場が入った商業ビル「ラナプラザ」が崩落し、1,100人以上の従業員が犠牲となる事故がダッカで発生しました。バングラデシュ史上最悪レベルの産業災害となったこの事故で、フェルドウスはその惨状を鮮烈に伝える写真を撮影しました。この事故を題材にした写真と映像のドキュメンタリー作品プロジェクトである『The Cost of Fashion』 と『After Rana Plaza』 を通じて、フェルドウスはいわゆるファストファッション業界が抱える問題に端を発した悲劇に光を当てました。その他にも、世界の4大陸での移民と逃亡の問題をテーマにした作品などを手がけています。世界の主要な新聞紙や雑誌のプロジェクトにも従事しており、受賞歴も多数あります。

年度ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード受賞 | 樂子毅「New Comer」

短いメッセージを発信できる中国版SNS「微博(ウェイボー)」を活用し、繊細なポートレートの被写体になることに興味を持った人びとを募って制作した作品。自信のなさや疎外感、虚無感を表現する手段としてステージドフォトグラフィーを撮影する樂子毅が、自己成長を目指したり社会の中で自分の居場所を探したりしている「New Comer」の世代を魅力的に描き出しました。

樂子毅のコメント:
「私は成長期に他人とコミュニケーションをほとんどとらず、ずっと疎外感を抱いていました。やがて、自分の居場所はどこにもないと思うようになりました。写真家としての基本的な本能から、自分のような若者をさまざまな都市から探し出し、その心に潜む同じような虚無感を感じてみようと思い立ちました。若者たちの表情を観察するとともに、自分が抱いている深刻な自信のなさに向き合ってみることにしたのです」

樂子毅は1993年中国・福建省生まれの写真家で、現在は雲南省でフリーランスとして活動しています。今回の受賞作に着手したのは2020年3月、仕事上の理由で杭州市に移ったものの、同じ業務の繰り返しの毎日に飽き飽きしていた時のことでした。当時の環境が自分と同世代のポートレートを撮影する作品へと突き動かしたのです。

カリン・レーン=カウフマンのコメント

「本年度のLOBAで審査員を務めたキャロライン・ハンター(イギリス、ガーディアン社『サタデー』誌ピクチャーエディター)、ホイットニー・ホリントン・マテウェ(アメリカ、『タイム』誌フォトエディター)、フランソワ・ヘブル(フランス、キュレーター)、ルカ・ロカテッリ(イタリア、写真家)を代表し、LOBAを受賞された両氏にお祝いの言葉を申し上げます。おめでとうございます。ファイナリストと受賞者を選出するのは困難ながらも充実した作業で、私たち審査員は互いの意見を尊重し合いながら一致協力してそれを成し遂げました。今回は特に心を揺さぶる力強い作品がバラエティー豊富に揃ったという印象でした」
(ライカギャラリー・インターナショナル代表兼アートディレクター カリン・レーン=カウフマン)

LOBAは写真の分野で最も権威あるコンテストのひとつとして認知されており、その受賞は大変な名誉であるとされています。 一般部門の受賞者には賞金40,000ユーロと10,000ユーロ相当のライカのカメラ製品が贈呈されます。新人部門の受賞者には賞金10,000ユーロと「ライカQ3」が贈呈されます。

両部門の受賞者は、ウェッツラーで開催される「セレブレーション・オブ・フォトグラフィー」の一環として10月12日に開催された授賞式にて表彰されると同時に、受賞者とファイナリストの全作品を展示する写真展がエルンスト・ライツ・ミュージアムにて開催されています。受賞者とファイナリストの全作品は、その写真展を皮切りに、世界各地のライカギャラリーや主な写真フェスティバルでも順次展示される予定です。

エルンスト・ライツ・ミュージアムでの写真展では、受賞者とファイナリストの全作品とその背景を掲載したカタログも販売されます。なお、エルンスト・ライツ・ミュージアムでの写真展は写真ラボのホワイトウォールの協賛を受けて開催されます。今年度の受賞者についての詳細はLOBAのウェブサイトでご覧いただけます。 www.leica-oskar-barnack-award.com

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ライカカメラ社-写真撮影のパートナー

ライカカメラ社は、カメラ製品とスポーツオプティクス製品をグローバルに展開するプレミアム企業です。卓越した品質の製品を作り続けた長きにわたる伝統とドイツのクラフツマンシップや革新的な技術と結びついた工業デザインにより、ライカブランドは伝説と呼ばれるほどの評価を確立しています。写真界の発展に寄与する活動として、世界各地に展開するライカギャラリーやライカアカデミーに加えて、「Leica Hall of Fame Award」の創設や、世界で最も権威のある国際写真コンテストのひとつとして認知されている「ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)」を主催するなど、さまざまな文化活動も行っています。
ライカカメラ社は、ドイツのヘッセン州のウェッツラーに本社を置き、ポルトガルのヴィラ・ノヴァ・デ・ファマリカンに第二工場を持っています。また、世界の各地域に拠点を築き、直営の販売店を独自のネットワークにより運営しています。