ポジティブ・ モーメント
ライカM10モノクロームとハービー・山口
"表現物には様々なテーマやコンセプトがあるのだが、私の個人的な考えでは、どんな手法であれ、自分が作品を見てポジティブになれたら、その表現物は私にとって価値あるものだと考えている。"
私の撮影方法は、日常の中で自分が惹かれる光景を見つけると、先づスナップするのだ。そして出来る限りその被写体となった人々と会話を持ち、同意が得られれば会話の中で見せる表情を追いかけ、もう一度シャッターを切る。もしその場で更に同意が得られれば、立ち位置や構図を整えても一度撮影するという方法だ。これはスナップとポートレイトの両面を掛け合わせているので、スナップ・ポートレイトと呼称したら良いのだろうか。
私が惹かれる光景とは、やはり人々が街の中で平和で美しく輝いている瞬間だ。そこにいる人物に効果的な光が当たり、その背景も素晴らしいとなると、チャンスはそう滅多にあるものではない。こうした街の光景は、私たち写真家が撮り残しておかなければ、それは次の瞬間、シャボン玉のように瞬く間に消え去ってしまうのだ。自分の人生や日常を振り返っても、輝いている瞬間に自分が居合わせることはそんなにあるのものではない。
"モノクロ表現にこだわっている写真家にとっては、メニューでモノクロに合わせるのとは違い、これほどのストイックなカメラは他に思い当たらない。黒いボディーには赤の文字が一切なく、M10Pでシルバーだったシャッターボタンやレンズ交換のボタンも黒く塗られていて、徹底したステルス性を打ち出している。カメラから「凄い写真をお願いします!!」と言葉をかけられている様だ。”