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2024年度ライカ・オスカー・バルナックアワードの受賞者が決定

世界的に権威のある国際写真コンテスト「ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)」の2024年度授賞式が現地時間10月10日夜にドイツ・ウェッツラーのライカ本社にて開催され、受賞者2名が発表されました。

第44回を迎えた今年度のLOBAで、厳正なる審査の結果、一般部門「ライカ・オスカー・バルナックアワード」の受賞者はイタリア生まれで現在はスイスに拠点を置く写真家 ダビデ・モンテレオネに決定しました。受賞作は「Critical Minerals – Geography of Energy」で、世界約50カ国/80名の写真のエキスパートから推薦された約250名の候補者の中から選ばれました。そして、30歳未満の若手写真家を対象とする新人部門「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」に輝いたのはモルドバの写真家 マリア・グツで、受賞作は「Homeland」です。

 

ダビデ・モンテレオネ: Critical Minerals – Geography of Energy
 2024年度ライカ・オスカー・バルナックアワード受賞

推薦者: アントニア・ベネデッタ・ドナート(イタリア)

エネルギー業界では今、再生可能エネルギーへの転換が進められていますが、それにまつわる問題点を指摘しているのが、現在も進行中のこの長期プロジェクト。チリ、コンゴ民主共和国、インドネシアの3カ国で撮影を敢行し、銅、リチウム、コバルトの採掘を具体例として取り上げて地政学的、社会的、生態的に複雑な影響を浮き彫りにしました。景観や採掘場など被写体は多種多様ですが、作品コンセプトの中心に据えられているのは現場で働く労働者たちです。

ダビデ・モンテレオネ 受賞コメント:
 “LOBAが栄えある賞であるのは誰もが認めるところです。歴代受賞者も錚々たる顔ぶれで、そこに私自身も名を連ねることになり光栄です。また、受賞によってこのプロジェクトとそのストーリーが注目を集める機会を与えられて、感慨深く思います。由々しき事態を浮き彫りにしたこのプロジェクトが多くの人の目に触れることになるのは喜ばしいことです。グリーンエネルギーへの転換と資源の公平な分配は重要な問題です。それゆえ、どのようなかたちであってもこのプロジェクトが広く世間に発信されるのは嬉しい限りです

ダビデ・モンテレオネ(Davide Monteleone)
1974年イタリア・バジリカータ州ポテンツァ生まれ。現スイス在住。ビジュアルアーティスト兼研究者として、イメージデザインからビジュアルジャーナリズム、執筆まで幅広い領域で活躍しています。イギリスのロンドン大学ゴールドスミス・カレッジでアートと政治学の修士を取得しており、キュレーターとしても活動する傍ら、公立および私立の教育機関で教鞭もとっています。2001年にはモスクワに移住して活動を開始。ここ数年は気候問題に関するテーマを重点的に取り上げ、経済的観点と地政学的観点が交わる部分にスポットを当てています。これまで手がけた作品は各地で展示されているほか、『ナショナルジオグラフィック』や『タイム』、『ザ・ニューヨーカー』などの雑誌にも定期的に寄稿。著書も多数。これまでに、フルブライト・ナショナルジオグラフィック・ストーリーテリング・フェローシップ、ナショナルジオグラフィック・ソサエティ・フェローシップ、アジア・ソサエティ・フェローシップを獲得しているほか、カルミニャック・フォトジャーナリズム・アワード、ヨーロピアン・フォト・エキシビション・アワード、ヨーロピアン・パブリッシャーズ・アワード・フォー・フォトグラフィー、世界報道写真財団の賞なども受賞しています。また、2020年度のLOBAでは「Sinomocene」で一般部門のファイナリストに選ばれました。

 

マリア・グツ: Homeland
2024年度ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード受賞

推薦者: ドクドクドク・スクール・オブ・モダン・フォトグラフィー(ロシア・サンクトペテルブルク)

ポートレートを中心としたこの印象的な作品シリーズの原点は、モルドバの写真家 マリア・グツ自身の過去のストーリーです。モルドバでは経済的な理由から子どもを残して国外へ出稼ぎに出る親が大勢いますが、作者の両親も同じで、作者は祖父母に育てられました。小国モルドバでは、過去20年に国外へ出稼ぎに出た人の数は人口のおよそ4分の1にのぼります。この作品ではルーツと何か、故郷とは何かという探求が詩的なビジュアルで綴られています。それらの意味は年月とともに大きく変わっていくのです。

マリア・グツ 受賞コメント:
私はモルドバ国内の村々をよく巡ります。穏やかな雰囲気の場所や人々の中に身を置くと、その土地や動物たちと結びついた質素で無理のない生活様式に刺激を受けます。この作品で撮影した子どもやティーンエイジャーには、自分自身の姿を重ね合わせています。親が出稼ぎに出ていったという同じ境遇を実際に体験しているからです。作品としては、家族や過去、そして生活そのものに対する郷愁や思慕の念が浮かんでくるものに仕上がっています。

マリア・グツ(Maria Guțu)
1996年モルドバ生まれの写真家。2022年にロシア・サンクトペテルブルクのドクドクドク・スクール・オブ・モダン・フォトグラフィーを卒業、それ以前にはモルドバの首都キシナウにあるアカデミー・オブ・ミュージック・シアター・アンド・ビジュアル・アートで映画制作も学んでいます。2019年にはルーマニア・ブカレストのセンター・オブ・ドキュメンタリー・フォトグラフィー(CDFD)から助成金を獲得。2020年にはオンラインマガジン『ザ・インデペンデント・フォトグラファー』のピープル・フォトグラフィー・アワードのファイナリストになりました。2021年からは女性写真家のための非営利団体 ウィメン・フォトグラフのメンバーになっています。すでに写真関連の国際的な賞で何度もノミネートされている実績があるほか、さまざまなグループ展にも作品が出展されています。

 

カリン・レーン=カウフマン(ライカギャラリー・インターナショナル代表兼アートディレクター) コメント:
今年度のLOBA審査員(ディミトリ・ベック - ポルカ写真部長、ペール・ギュルヴィ - 国際写真センター<ICP>教育部門長、シリル・ヤズベック - スロベニアの写真家/2013年度ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード受賞者、アメリー・シュナイダー - ドイツ『ディー・ツァイト』紙写真編集部長、そして私自身)を代表し、LOBAを受賞された両氏にお祝いの言葉を申し上げます。誠におめでとうございます。受賞作はどちらもLOBA設立時からのテーマである「人々とその周辺環境との関係」を問うものとして受賞に値する秀作であると同時に、独自のアプローチが際立つ作品でした。

ディミトリ・ベック コメント:
LOBAが世界の写真シーンにおいて非常に有意義な賞であり、写真を通じた素晴らしいビジュアルストーリーテリングの発展において大きな役割を果たしていることは間違いありません。12名のファイナリストとその作品の選出は、世の中で現在起きている多様な物事の様相とそのストーリーを探求するうえで大きな意味があることでした。

アメリー・シュナイダー コメント:
紛争などの危機的状況や社会不安が深まる時期には、人々の感情を揺さぶり、心を動かすメディアとして、そして、世界情勢をリアルに感じてもらうためのメディアとして、写真は存在意義を発揮し続けています。 

ペール・ギュルヴィ コメント:
世界中の優れた写真作品に脚光を当て、その素晴らしさを称えるという意味で、そして写真の社会的な役割を問い続ける推進力になっているという意味で、LOBAは世界の写真シーンにおいて重要な役割を果たしています。

 

LOBAは写真の分野において最も権威あるコンテストのひとつとして認知され、その受賞は大変名誉であるとされています。一般部門の受賞者には賞金40,000ユーロと10,000ユーロ相当のライカカメラ製品が、新人部門の受賞者には賞金10,000ユーロと「ライカQ3」がそれぞれ贈呈されます。

両部門の受賞者は、ドイツ・ウェッツラーで開催された「セレブレーション・オブ・フォトグラフィー」の一環として10月10日に行われた授賞式にて表彰され、同時に、受賞者とファイナリストの全作品を展示する大規模写真展がエルンスト・ライツ・ミュージアムにて開催中です。この写真展を皮切りに、受賞者とファイナリストの作品は世界各地のライカギャラリーや写真フェスティバルでも順次展示される予定です。また、受賞者とファイナリストの全作品と解説を紹介するカタログも出版されます。

エルンスト・ライツ・ミュージアムでの写真展は、写真ラボのホワイトウォールの協賛で開催されます。

今年度の受賞者についての詳細はLOBAのウェブサイトでご覧いただけます。
www.leica-oskar-barnack-award.com

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ライカカメラ社-写真撮影のパートナー

ライカカメラ社は、カメラ製品とスポーツオプティクス製品をグローバルに展開するプレミアム企業です。卓越した品質の製品を作り続けた長きにわたる伝統とドイツのクラフツマンシップや革新的な技術と結びついた工業デザインにより、ライカブランドは伝説と呼ばれるほどの評価を確立しています。写真界の発展に寄与する活動として、世界各地に展開するライカギャラリーやライカアカデミーに加えて、「Leica Hall of Fame Award」の創設や、世界で最も権威のある国際写真コンテストのひとつとして認知されている「ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)」を主催するなど、さまざまな文化活動も行っています。
ライカカメラ社は、ドイツのヘッセン州のウェッツラーに本社を置き、ポルトガルのヴィラ・ノヴァ・デ・ファマリカンに第二工場を持っています。また、世界の各地域に拠点を築き、直営の販売店を独自のネットワークにより運営しています。