オーストリアのオークションハウス ライツ・フォトグラフィカ・オークションは10月18日夜、過去100年の写真の歴史の中で撮影された歴史的に価値の高い名作を対象としたオークションをライカギャラリー ウィーンで開催、ライカ関連施設での開催は今回が初となりました。また、オークションに先がけて出品する作品を展示した写真展がライカギャラリー ウィーンにて2週間にわたって開催されました。今回のオークションと写真展は、人間のさまざまなジェスチャーを捉えた作品がメインだったことから「Gestures」と題し、ジェスチャー以外にもポップカルチャーの象徴を被写体とした作品や観光名所を写した作品、印象的なスナップ風のルポルタージュ作品も出品されました。特に大きな話題を集めたのは、ナン・ゴールディンが撮影した「Jimmy Paulette on David's Bike」で、6万6,000ユーロ(落札手数料を含む )で落札されました。
オークションハウスのライツ・フォトグラフィカ・オークションが今回開催した写真作品のオークションには、文字通りの意味でもメタファー(隠喩)としても「ジェスチャー」という言葉で表現するのがふさわしい作品が多数出品されました。全体を通して、写真の歴史に見られる豊かな多様性がうかがえます。様式も視点も被写体も実に多種多様で、写真がいかにバリエーションに富んだ芸術形式であるかを物語ります。出品された作品のうち最も新しい作品は2020年代に、そして最も古い作品は1920年代に撮影されたものでした。
「ライツ・フォトグラフィカ・オークションは、写真関連のあらゆる分野の希少なアイテムを専門に取り扱うオークションハウスです。ヴィンテージカメラから歴史的に価値の高いカメラアクセサリー、そして貴重な写真作品まで、写真に関するアイテムに興味がある方にとっては、私たちが開催するオークションはこの上ない機会となっています。表現の手段としては比較的歴史が浅いながらも、写真がいかに魅力的で多様性に富んでいるか。今回の『Gestures』に出品された100点以上の作品からはそのことがおわかりいただけたと思います」 ── ライツ・フォトグラフィカ・オークションの社長であるアレクサンダー・セドラクは語っています。
自転車の後部から未来を見据えるまなざし
今回のオークションと写真展では数多くの作品が大きな注目を集めましたが、その筆頭はナン・ゴールディンが撮影した「Jimmy Paulette on David's Bike」です。この作品は、1993年に初版が出版されたゴールディンの代表的な写真集『The Other Side』の新増補版の表紙に採用されています。自信を宿したその視線の先にあるのは、未来。トランスジェンダーやドラァグクイーン――1970年代初頭から現在に至るまで、ゴールディンがボストンのバーでそのポートレートを撮影し、『The Other Side』に収めた人びと――が社会のメインストリームやポップカルチャーで地位を確立するという未来です。
「1991年に撮影されたこの作品は、ゴールディンの親友であるジミーとデイヴィッドを被写体にしたもの。ニューヨークの街中を自転車で気ままに走る屈託のない様子が写し出されています。自転車の後部で自信に満ちた表情とともにゴールディンのカメラに力強いまなざしを向けるジミー。その表情はまるで、自分のジェンダーとアイデンティティを自分で決める権利がもはや幻想ではない未来がやがて訪れることを予感していたかのようです。脳裏に強く焼き付くこの写真には、ゴールディンの作品の顕著な特徴が凝縮されています。それは、ポートレートから感じられる親密感、被写体から醸し出されるリアルさ、そして社会的・政治的な問題に巧みに、それでいて力強く向き合う姿勢です」 ──ライツ・フォトグラフィカ・オークションの写真作品のオークション責任者であるカロリーヌ・グシェルバウアーは語ります。この作品は6万6,000ユーロ(落札手数料を含む)で落札されました。
氷上をエレガントに舞う人物を捉えたアルフレッド・アイゼンスタットの作品
ナン・ゴールディンの「Jimmy Paulette on David's Bike」が新時代の到来を感じさせる作品だったのに対し、アルフレッド・アイゼンスタットの「Ice Skating Waiter」は今日では忘れ去られてしまったような世界を思い出させる作品です。1931年にスイス・サンモリッツで撮影されたこの作品には、グランドホテル・サンモリッツのスケートリンクで、ヘッドウェイターを務めていたルネ・ブレゲという人物が正装してシャンパンのボトルとグラスを載せたトレイを持ち、バランスをとりながら氷上を滑る姿が写っています。ブレゲはグラスの中身を一滴もこぼさずに椅子を跳び越えることができたと言われています。この作品は、アイゼンスタットがドイツからアメリカに移住した後の1936年に『ライフ』誌で発表した作品シリーズの一部です。今回のオークションでは7,800ユーロ(落札手数料を含む)で落札されました。
写真作品のオークションは10月に、カメラ関連製品のオークションは11月に開催
今回のオークションで出品された作品は全部で107点でした。今回落札されなかった作品は11月15日までの期間中に購入することが可能です。その後、11月23日にはカメラおよびカメラ関連アクセサリーを専門に扱うオークション「Leitz Photographica Auction」が開催されます。オークションハウスであるライツ・フォトグラフィカ・オークションと同名のこのオークションは、今回で45回目の開催となります。
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オークションおよび写真展「Gestures」についての詳細は、「Leitz Photographica Auction」のウェブサイト(www.leitz-auction.com)またはライカカメラ・クラシックのウェブサイト(www.classic.leica-camera.com)をご覧ください。
ライカカメラ社-写真撮影のパートナー
ライカカメラ社は、カメラ製品とスポーツオプティクス製品をグローバルに展開するプレミアム企業です。卓越した品質の製品を作り続けた長きにわたる伝統とドイツのクラフツマンシップや革新的な技術と結びついた工業デザインにより、ライカブランドは伝説と呼ばれるほどの評価を確立しています。写真界の発展に寄与する活動として、世界各地に展開するライカギャラリーやライカアカデミーに加えて、「Leica Hall of Fame Award」の創設や、世界で最も権威のある国際写真コンテストのひとつとして認知されている「ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)」を主催するなど、さまざまな文化活動も行っています。
ライカカメラ社は、ドイツのヘッセン州のウェッツラーに本社を置き、ポルトガルのヴィラ・ノヴァ・デ・ファマリカンに第二工場を持っています。また、世界の各地域に拠点を築き、直営の販売店を独自のネットワークにより運営しています。